酵素とは、生命の維持や活動に不可欠な触媒機能を持った蛋白質の一種です。生物の中で起こる化学反応は、そのほとんどが酵素の触媒作用によるものであり、酵素が生体触媒と呼ばれる所以です。現在その働きが知られている酵素の種類は約4,000種類あります。
酵素の作用は生物の体の中と同じ温和な環境で起こり、生物を構成する物質の合成や分解、エネルギーの創生により生命活動を生み出します。酵素は特定の反応だけを触媒する選択性(反応特異性)と特定の物質だけに作用する選択性(基質特異性)など極めて高い触媒特異性を持っています。温和な条件での作用と相俟って、酵素の作用を私達人類の生活に利用する技術は、バイオテクノロジーの鍵と言えます。
酵素と人類の係わりは、まだ人類が酵素を知らなかった太古の時代から、微生物による醗酵技術として食品の加工に利用して来ました。古代エジプトでは醗酵によりパンやビ-ルが、日本においても縄文時代からお酒が醗酵により造られて来ましたが、醗酵の正体が酵素作用であることが解明されたのは、19世紀になってからでした。酵素(enzyme)は「酵母(zyme)の中にある(en)」というギリシャ語が語源といわれています。
酵素の分類は国際生化学連合(International Union of Biochemistry and Molecular Biology)の酵素委員会(Enzyme Commission)により、触媒する反応により大きく酸化還元酵素・転移酵素・加水分解酵素・脱離酵素・合成酵素・異性化酵素に6分類されています。個々の酵素には更に酵素が作用する物質の化学名と反応機構から系統的に分類・命名され、頭にECを付した4つの要素からなる番号が付いています。例えば、1,4-α-D-Glucan glucanohydrolase(慣用名: α-アミラーゼ )はEC 3.2.1.1となります。


